”人は忙しいことよりも後ろにだれもいないことで会社を去っていくかもしれない”というおはなし

2020.11.30.柴田



おいかぜは年間3回くらい中途採用の募集をかけます。

人が辞めていくから採用するわけではなくって、緩やかに拡大しているといった感じです。
来春は新卒採用の子たちが入ってくるからグッと増える感じはあるんだけれど、それでも1年に5人程度増える感じ。
ボクにとってはそれくらいのペースがちょうど良い。

募集媒体はマイナビ中途さんにお願いしていて、かれこれ7年くらいのお付き合いになるんじゃないでしょうか。
中途採用の媒体費用って決して安くはないのですが、最初の営業さんがとても面白い人で、その人との縁で一度使ってみたらすごく良い採用ができた、そんなことが媒体を使ったきっかけでした。

この2年間くらいは本当に良い採用ができていて、優秀な人が増えてよしよしなんて思っていたら、あっという間に人手不足。
仕事は人につくので、優秀な人はあっという間に忙しくなっちゃう。
そりゃそうだ。

そんなこんなで来月からディレクターとデザイナーの中途採用の募集を出すことにしました。
両方1名ずつ採用したいと思っています。
素敵な出会いがあるといいなぁと、今からとても楽しみにしています。
事務所のレイアウトの変更をしたばっかりなんだけど、もうすでに手狭感がある、早く移転を前に進めないといけないと、少し焦っていたりもするのですが。

こうやって書きながら振り返ってみると、おいかぜにはマイナビ中途で採用した人がたくさんいます。
一緒に仕事をしているスタッフの顔を思い浮かべたとき、あまり採用のきっかけは意識していないなということに気付かされます。
直接採用だろうと媒体採用だろうと、たぶん何かしらの縁があって、お互いが何かに惹かれあって一緒に働いているんだろうなと思うわけです。
30人を越える規模になって、ボクがスタッフ全員に同じ密度で接していくことはできないけれど、みんな等しくおいかぜで働くことのやりがいや楽しさを感じてもらいたいって思っています。
そのための制度であり仕組みであり環境だと思っていて、それらを整えていくことが、ボクがやるべきことの中で一番大事なことだと思っています。
言葉をかけるとか、話をするとか、仕事で伴走するってことはもちろん大事なことなんだけど、いまのおいかぜの規模でそれらを等しくすることは不可能だと思っています。
だからこそ制度・仕組み・環境を整えることでみんなに愛情を伝えたい、伝えられるって思っています。

おいかぜは比較的離職率の低い会社です。
そして社外の人から「おいかぜさんって良い会社ですね」って声をかけてもらうことが多いです。
社内のスタッフたちも直接言ってくれることはないけれど、みんな楽しそうに居心地良さそうに働いてくれています。
明確な定義が難しいところだけれど、ボクはおいかぜは良い会社だと思っています。

でもずっと昔から良い会社だったなんてことは思っていなくて、人がたびたび辞めていく時期があったり、制度や仕組みや環境が整っていなくって仕事に支障が出ていたりする時期もありました。
どんなにボクに”より良い会社にしたい”という想いがあったとしても、それを言語化できていなかったり具体化できていなければ意味がない。

人がたびたび辞めていくとき、いろんな事情があるにせよ、それは経営者にとっては辛いことではあります。
人が辞めていくたびに、ボクなりに”何で辞めることになったんだろう?”と考えます。もちろん本人が正直に理由を話してくれることもありますが、そうでないときもある。
17年間も経営者をやっていて、ようやく最近になって人が辞めていくときの何かしらの共通点がわかってきた、それが確信に近づいているような気がしています。

それは”人は忙しいことよりも後ろにだれもいないことで会社を去っていくかもしれない”ということです。

ボクの経験的に、人は仕事が忙しいってことだけでは会社や組織をやめないと思っています。
もちろん程度の問題はあるのだけれど。
でも後ろにだれもいない、この状況をわかってくれていないって感じるとき、組織を去っていくことになるんだと思っています。
つまり組織に属しているのに孤独を感じるとき

ここ数年のチームビルディングとマネジメントで、ボクが強く意識していることがあります。
それは”スタッフの心理的安全をどう確保するか”ということ。
言葉で書くと簡単なことなんだけれど、人によって違う“心理的安全“を組織にどう汎用的に取り入れていくことはとても難しい。
そして役割・タスクに対して、どう心理的安全を設定するか、そこを間違えてしまうと仕事に対する無責任さや甘えみたいことを生む可能性もあります。

結局のところおいかぜで働いてくれる人たちにとっての最大公約数的な制度・仕組み・環境を整えつつ、丁寧にコミュニケーションを取っていくという答えのような答えでないような抽象的なところに着地してしまいます。

おいかぜのはたらくデザイン事業部

その抽象度の高い状態から抜け出したい想いでつくったのが”はたらくデザイン事業部”という取り組みです。

はたらくデザイン事業部には”スタッフの心理的安全をどう確保するか”ということのエッセンスが詰まっています。
スタッフの心理的安全を確保すること”には当たり前ですがコストがかかります。
会社がそのコストを負担することってとても大変で勇気がいることなんだけれど、心理的安全を確保することで、スタッフのモチベーションやパフォーマンスが上がるのであれば、それは決して悪くない話。
人材が長く会社に留まってくれて、スタッフは働きやすくなる、どちらにも損はないはずです。

もう少し違う言葉で言い換えるとしたら、心理的安全は”前方の障害物を取り除くこと”じゃなく”後方の支えを強化すること”で高まる、制度・仕組み・環境を整えることでスタッフに愛情を伝えたい・伝えられると信じているということに、つまりは”はたらくデザイン事業部”で実現したいことに帰結します。あくまで理想として。

でもさきほど書いたように、ずっと内側のことばかりに目を向けていられない、常にコストをかけていくわけにはいかないと思います。

だから理想は理想で掲げておいて、”人は忙しいことよりも後ろにだれもいないことで会社を去っていくかもしれない”という前提を持って、”スタッフの心理的安全をどう確保するか”を意識することができれば、”良い会社づくり”の第一歩を踏み出せるのではないだろうかと、そんなことを考えています。

良い会社”という抽象的な言葉も、きちんと言語化していかないといけないなぁ。
書いても書いても新しいテーマや問いが生まれてきますよね。でもこのキリのないこと自体が会社を経営していくことなんだろうなとも思うわけです。




(noteでの記事はこちらから)