株式会社おいかぜ15周年にあたって、『はたらくデザイン事業部』を立ち上げます。
事業部と言っても、いまのところボク1人です。事業部長で事業部員です。
おいかぜの敏腕デザイナーやまもっちゃんに、忙しいのに無理を言って、とっても可愛いロゴをつくってもらいました。こんなロゴがあれば1人でも意気揚々です。
ボクは、株式会社おいかぜの経営者として15年間働いてきました。
その中で考え、実践し、かたちにしてきたことを、他の「はたらく」人たちにも役立てないかと思い立ち上げたのが、この『はたらくデザイン事業部』です。
それはいったいどんなものなのか、今からご紹介したいと思います。
「『はたらく』をつくる」をより良くするために
「はたらく」ってどういうことなのでしょう?
誰もがぶつかるであろうこの問い。
ボクは働き始めて約20年、創業から15年間、いや働き始めるよりずっと以前、親の働く姿を意識して見るようになってから「『はたらく』ってどういうことだろう?」と考え続けてきました。
特に15年間の経営者としての経験は、「はたらく」とは何かということをより深く考える経験でもありました。
経営者の仕事とは、ざっくりと言ってしまえば「『はたらく』をつくる」ことです。
新しい仕事、新しい「はたらく」人をつくっていき、会社を成長させていくこと。だからこそボクは、「はたらく」とは何か、そして「組織ではたらく」とはどういうことなのかというとても根本的なことを、ずっと考え続けてきました。
その結果、あるひとつの考えにたどり着いたのです。
ボクは経営者です。ボクの「はたらく」はボク自身でつくっていけます。
だけど、何かの縁でボクの元で働いてくれている社員は、すべての「はたらく」を自分でつくれるわけでなく、会社の方針や仕組みに則ってはたらいてくれているわけです。
この「方針や仕組みをつくっていくこと」はボクの仕事で、会社経営という仕事の一部です。自分の「はたらく」だけではなく、社員の「はたらく」を支える、とても大事な業務です。
ボクは方針や仕組みを整えることが好きなので、創業してすぐに見積・請求システムをつくったり、まだ役員しかいないときに経理のルーチンをつくったりしていました(この見積・請求システムは今でも使っています)。そういえば給与制度も自分で考えたこともあるし、いまでも何かの仕組みを考えることが大好きです。
方針や仕組みをつくる以外にも、会社経営にはやることがたくさんあります。
自分たちの商品とは何かを追求し、事業を成長させていくことはもちろんのこと、経理・労務・広報・人事……それぞれの業務の中にも本当に細かく、たくさんやるべきことや、やらなければならないことがあります。
その一方で経営者は、新しいことにチャレンジし、変化をし続けていかないといけません。
常に変わり続けていかないと、会社が継続あるいは成長していけないからです。
会社の中を整えながら、会社の外へ新しいものを求めに行く。
このように、会社経営を続けるということは、とてもハードでマルチな才能を求められます。
特に会社の規模が小さいとすべての会社経営の業務を経営者がする必要があるので、絶妙のバランス感覚が求められます。
この、会社経営における絶妙なバランスとは何か?ということは、ボクの長年の疑問であり追い求めていたテーマでした。
それがわかれば、ボクの仕事である「『はたらく』をつくる」は、より良いものになるのではないかと考えていたのです。
「既成概念の内と外」を行ったり来たりすること
最近、その疑問を解くキーワードは「既成概念の内と外」なんじゃないかと、そんな気がしてきました。
「既成概念」とはその言葉の通り、現在までに培われ、みんなに認められてきた概念です。会社にとっての「既成概念」とは、わかりやすく言えば「すでに会社の血肉になっているもの」ということになります。具体的には、社員や既存の制度・仕組み、そして今まで育ててきた事業がそれにあたります。
誤解を恐れずに言うと、経営者にはこの「既成概念の内と外」を行ったり来たりすることが求められます。
新しいことにチャレンジしたり、前へ進もうとするとき、「既成概念」を半ば置き去りにして外に出る。でも「既成概念」の内側には、社員や既存の制度・仕組み・事業があったりするので、外に行きっぱなしでも良くありません。
だからその境界線を行ったり来たりする必要があるのですが、それにはすごく難しいバランス感覚が必要とされます(ここでは社員を「既成概念」の内側に入れていますが、社員が枠をはみ出さないような人と言いたいわけではなく、あくまで会社視点で見たときの「既成概念」の内側という意味です)。
会社が小さい規模のとき、良くも悪くも会社の制度や仕組みが必要でなかったり、制度や仕組み自体ができていなかったりすることが多いので、この「既成概念」の内と外の境界線はあまり意識されることなく、そして社長がすべてマネジメントできてしまいます。
でも、ある規模(社員数・事業規模・売り上げ)を超えたとき、恐らく並行して制度や仕組みが必要とされ、この境界線がぼんやりと現れ始めるのです。
そのとき初めて、経営者と「既成概念」の内側の間にギャップが出始めると思っています。
この「既成概念」の境界線を行き来することは、ユニークなビジネスを思いついて推し進めたり、事業をどんどん成長させていくこととは違う能力です。
だから、周りから見て売り上げが順調そうで事業がうまくいっているタイプの経営者(主に社長)ほど、このギャップに悩まされたりしています。
つまり、この「既成概念」の境界線を上手に行き来することに会社経営の鍵があるのではないかと考えました。
大事な素養は「経営者としての視座」
「既成概念」の内側は、ボクは大きく分けて5つのカテゴリーに分かれると考えています。
①労働環境
ハードウェア:オフィス・設備など
ソフトウェア:人間関係・レクリエーションなど
②労働条件 給与
・手当・休日・福利厚生
③仕事のやりがい 役割の認定
・個人のビジョン
・技能の向上(教育制度)
・キャリア形成(社内 / 社外)
④会社の性質
・会社のことや経営に関する透明性
・環境や状況に対する改善性
・社員 / 外部スタッフの意見を聞く傾聴性
⑤会社のビジョン
・将来性 社内 / 社外ブランディング
・会社の成長性(数値的・社会貢献的)
・昇給昇級モデル
・ロールモデル(役割のモデル)
5つのカテゴリーと書きましたが、実際にはとても多面的で複合的なので、必ずしも段階を踏んで捉えているものではないのであしからず。
経営者が新しいことにチャレンジしたり前へ進もうとするとき、つまり「既成概念」の外に出ようとするとき、正論で言うとこの5つのカテゴリーが整っているかをチェックする必要があります。
前へ進むたびに毎回すべてをチェックすることはかなり厳しいのも事実ですが、社員はこれらすべてについて常に意識をしています。なぜなら彼らにとってこれらは、組織の中で「はたらく」うえでとても大事なことだからです。
いわゆるマネジメントとはそういうことだよ、と言われてしまえばそれまでだし、中間管理職とはそういうポジションなのかもしれません。
でも、中間管理職にはない、この「既成概念」の境界線を行ったり来たりするために必要な、大事な素養があります。
それは、経営者としての視座です。
よく「社員も経営者目線で仕事をしろ」という言葉がありますが、ボクの経験的に言って、それはほとんどの雇われている人たちには無理です。この「既成概念」の境界線を意識しながら「はたらく」ことができるのは、ほとんどの場合は経営者です(もしそういう社員を雇っておられる経営者の方がいらっしゃったら、ぜひ大事にしてあげてください!)。
ボクは15年間経営をしてきて、そして周りの経営者を見ていくうちに、実は自分はこの「既成概念」の境界線を行ったり来たりすることが得意なのではないかということに気がつきました(ボクはいつも大事なことに気づくのが遅い……15年かかりました)。
『はたらくデザイン事業部』を立ち上げます
ボクには15年間会社を経営してきた実績と、その間に「既成概念」の内と外を行ったり来たりしながら会社を成長させてきた経験があります。
プロダクション事業部(ウェブデザイン・グラフィックデザイン)、プラットフォームソリューション事業部、ほうれんそう全社会議、oikazeごはん、OF PLANTS、こどものためのデザインプロジェクト ワワワ……
これらのいろいろな企画は、ボクなりの「既成概念」の境界線を行き来した結果、おいかぜに生まれた「はたらく」です。
そのようにしてボクは「『はたらく』を生み出し、『はたらく』をデザインする」ことを続けてきました。
15周年を境に、このボクの、ボクたちのノウハウを少し事業にしてみたいと思います。
それが『はたらくデザイン事業部』です。
会社の「既成概念」の内側を整えながら、外側へ出ていく経営者をサポートしていく。それを事業というかたちにし、新しい「はたらく」をつくるお手伝いができたらと思っています。
在野で15年近く「はたらく」をつくる側にいるボクが身体的に覚えたことを、おいかぜでさらに役立てたいのはもちろん、今後はここ京都、そして日本すべての「はたらく」人たちのために役立てたらと思っています。
はたらきかたの改革はどこかからやってくるのではなく、すでにボクたちのみなさんの手の中にヒントがあるはずです。
どうぞよろしくお願い致します。
代表 柴田